問4
A 労働基準法第 2 条により、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」であるが、個々の労働者と使用者の間では「対等の立場」は事実上困難であるため、同条は、使用者は労働者に労働組合の設立を促すように努めなければならないと定めている。
B 特定の思想、信条に従って行う行動が企業の秩序維持に対し重大な影響を及ぼす場合、その秩序違反行為そのものを理由として差別的取扱いをす ることは、労働基準法第 3 条に違反するものではない。
C 労働基準法第 5 条に定める「監禁」とは、物質的障害をもって一定の区画された場所から脱出できない状態に置くことによって、労働者の身体を拘束することをいい、物質的障害がない場合には同条の「監禁」に該当することはない。
D 法人が業として他人の就業に介入して利益を得た場合、労働基準法第 6 条違反が成立するのは利益を得た法人に限定され、法人のために違反行為を計画し、かつ実行した従業員については、その者が現実に利益を得ていなければ同条違反は成立しない。
E 労働基準法第 10 条にいう「使用者」は、企業内で比較的地位の高い者として一律に決まるものであるから、同法第 9 条にいう「労働者」に該当する者が、同時に同法第 10 条にいう「使用者」に該当することはない。
問4 解答
正解 B (難易度:C)
1.× 誤っている。労働基準法第2条は「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」と定めていますが、使用者に労働組合の設立を促すように努めなければならないと具体的に定めているわけではありません。この条文は労働条件決定の理念を示しており、具体的な義務を定めるものではないです。
2.○ 正しい。特定の思想や信条に基づく行動が企業の秩序維持に重大な影響を及ぼす場合、その秩序違反行為を理由とした差別的取扱いは、労働基準法第3条の禁止する「不合理な差別」に該当しないことがあります。企業の秩序維持は合理的な管理運営上の要請として認められることがあり、この観点から差別的取扱いが許容される場合があるためです。
3.× 誤っている。労働基準法第5条における「監禁」は物理的な障害に限定されません。心理的な圧力や脅迫を含む幅広い状況が「監禁」と解釈され得ます。従って、物質的障害がない場合でも「監禁」に該当する可能性があります。
4.× 誤っている。法人が業として他人の就業に介入して利益を得た場合、労働基準法第6条違反が成立する可能性がありますが、これは法人だけでなく、違反行為を計画し実行した従業員にも適用される可能性があります。従業員が直接利益を得ていなくても、法人のために行動した場合には責任を問われることがあります。
5.× 誤っている。労働基準法第10条における「使用者」は一律に地位の高い者とは限らず、状況によって異なります。また、ある状況下では、同じ個人が労働者(労働基準法第9条)でありながら使用者(第10条)の地位にあることもあり得ます。
【解説】
労働基準法の総則は、労働者と使用者の権利と義務、労働条件の決定、差別的取扱いの禁止、監禁の禁止、就業介入の禁止、および使用者の定義などに関する基本的な原則を定めています。これらの原則は労働者の権利を保護し、公正な労働条件を促進するために重要です。選択肢Bは、企業秩序維持のための合理的な差別的取扱いが許容される場合について正しく説明しており、労働基準法の規定と解釈を反映しています。他の選択肢は、法律の内容や解釈に関する一般的な誤解を示しています。
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