令和5年度問6 労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。 

令和5年度本試験

問6

A 労働基準法第 24 条第 1 項に定めるいわゆる直接払の原則は、労働者と無関係の第三者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他法定代理人に支払うことは直接払の原則に違反しないが、労 働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは直接払の原則に違反する。

B いかなる事業場であれ、労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選 出された者であって、使用者の意向に基づき選出された者でないこと、と いう要件さえ満たせば、労働基準法第 24 条第 1 項ただし書に規定する当
該事業場の「労働者の過半数を代表する者」に該当する。

C 賃金の所定支払日が休日に当たる場合に、その支払日を繰り上げることを定めることだけでなく、その支払日を繰り下げることを定めることも労働基準法第 24 条第 2 項に定めるいわゆる一定期日払に違反しない。

D 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっ ても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならないが、その支払い には労働基準法第 24 条第 1 項の規定は適用されない。

E 会社に法令違反の疑いがあったことから、労働組合がその改善を要求して部分ストライキを行った場合に、同社がストライキに先立ち、労働組合の要求を一部受け入れ、一応首肯しうる改善案を発表したのに対し、労働組合がもっぱら自らの判断によって当初からの要求の貫徹を目指してストライキを決行したという事情があるとしても、法令違反の疑いによって本 件ストライキの発生を招いた点及びストライキを長期化させた点について使用者側に過失があり、同社が労働組合所属のストライキ不参加労働者の労働が社会観念上無価値となったため同労働者に対して命じた休業は、労働基準法第 26 条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものであるとして、同労働者は同条に定める休業手当を請求することができるとするの が、最高裁判所の判例である。

問6 解答

正解 C (難易度:B)

1.× 解説:Aの記述は誤っています。労働基準法第24条第1項の直接払の原則は、賃金を労働者本人に直接支払うことを要求します。ただし、法定代理人に支払うことは認められていますが、労働者の任意代理人に支払う場合は、労働者の事前の同意や特定の条件が必要となる場合があり、原則として直接払いに違反しないとは限りません。

2.× 解説:Bの記述は正しいです。いかなる事業場であっても、労働基準法に規定する協定等をする者が使用者の意向に基づかず選出され、労働者の過半数を代表する者であれば、法第24条第1項ただし書きに規定する「労働者の過半数を代表する者」に該当します。

3.○ 正しい:Cの記述は誤っています。労働基準法第24条第2項の一定期日払いの原則により、賃金の所定支払日が休日に当たる場合、原則としてその前日に繰り上げて支払うことは認められていますが、支払日を繰り下げることは認められていません。

4.× 解説:Dの記述は正しいです。労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために賃金の前払いを請求する場合、労働基準法第24条第1項の直接払いの原則が適用されず、使用者は既往の労働に対する賃金を支払わなければならないとされています。

5.× 解説:Eの記述は正しいです。最高裁判所は、法令違反によるストライキが発生した際、使用者側に過失があり、ストライキ不参加労働者の労働が社会観念上無価値となった場合、休業は労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものとし、休業手当の支払いを認める判例があります。

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