Cは、D所有の乙建物(床面積120㎡)につき、事務所使用を目的として、期間3年、賃料月額15万円と定めた賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)をDと締結してその日に引渡しを受けた。この場合における次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
1.DはCに対して、本件契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第32条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。
2.本件契約が借地借家法第32条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Cは、乙建物の引渡しを受けてから1年後に乙建物をDから購入したEに対して、賃借人であることを主張できる。
3.本件契約が借地借家法第32条に規定する定期建物賃貸借契約である場合、Cの中途解約を禁止する特約があっても、やむを得ない事情によって乙建物を自己の事務所として使用することが困難になったときは、Cは本件契約の解約の申入れをすることができる。
4.CがDに対して敷金を差し入れている場合、本件契約が期間満了で終了するに当たり、Dは乙建物の返還を受けるまでは、Cに対して敷金を返還する必要はない。
問12 解答
正解 2 (難易度B)
1.○ 正しい
借地借家法第32条によれば、定期建物賃貸借契約は、期間の満了をもって終了することを明示し、更新のないことを契約書に記載して交付することで、定期建物賃貸借契約として成立する。
2.× 解説
本件契約が借地借家法第32条に規定する定期建物賃貸借契約である場合、Cは乙建物の賃貸借が期間満了で終了するため、Eに対して賃借人であることを主張できない。ただし、定期建物賃貸借契約でない場合、賃貸借関係は継続しており、CはEに対して賃借人であることを主張できる。
3.○ 正しい
借地借家法第32条第2項によれば、定期建物賃貸借契約であっても、やむを得ない事情により使用が困難になった場合、賃借人は解約の申し入れをすることができる。ただし、中途解約を禁止する特約があっても適用される。
4.○ 正しい
民法第605条によれば、敷金は賃貸借の担保であり、賃貸借が終了した場合、返還を請求することができる。ただし、建物の返還を受けるまで、敷金を返還する必要はない。これは、建物の状態を確認し、必要な費用を敷金から差し引くためである。
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