令和5年度 問4 AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している場合において、民法の規定及び判例によれば、次のアからエまでの記述のうち、Aが一方的な意思表示により甲債権と乙債権とを対当額にて相殺できないものを全て掲げたものは、次の1から4のうちどれか。なお、いずれの債権も相殺を禁止し又は制限する旨の意思表示はされていないものとする。

ア 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をした乙債権

イ 弁済期が到来している甲債権と、弁済期の定めのない乙債権

ウ 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期が到来している乙債権

エ 弁済期が到来していない甲債権と、弁済期が到来している乙債権

1 ア、イ、ウ
2 イ、ウ
3 ウ、エ
4 エ

問4 解答

正解 4 (難易度:B)

1.× アの場合、弁済期の定めのない甲債権はすぐに弁済を請求できるものとみなされ、乙債権についてAが期限の利益を放棄しているため、双方の債権は相殺可能です。この解釈は、民法の相殺の規定(民法第504条)および関連する判例に基づきます。

2.× イの場合、甲債権の弁済期が到来しており、乙債権に弁済期の定めがないため、これも相殺可能です。民法第504条の規定により、弁済期が到来している債権については、相殺が可能と解されます。

3.× ウの場合、甲債権に弁済期の定めがなく、乙債権の弁済期が到来しているので、この場合も相殺が可能です。民法第504条に基づくと、双方の債権が弁済を請求できる状態にあるため、相殺が認められます。

4.○ 正しい。エの場合、甲債権の弁済期がまだ到来していないため、この債権についてはAはまだ弁済を請求できません。一方で乙債権の弁済期は到来しています。民法第504条によれば、債権がともに弁済請求できる状態にないと相殺はできないため、この組合せでは相殺は不可能です。

不正解の選択肢解説:

ア:弁済期のない債権は即時弁済を請求でき、期限の利益放棄により乙債権も弁済を請求できる状態にあるため相殺可能。
イ:両債権ともに弁済を請求できる状態であるため相殺可能。
ウ:同じく、弁済を請求できる状態であるため相殺可能。

この問題は、民法第504条(相殺)の理解を問うものであり、相殺の要件として双方の債権が弁済を請求できる状態である必要があることを理解しているかを試す内容です。相殺に関する基本的な判例や通説を参考にしています。類似の過去問は見当たりませんが、法律条文の直接的な適用を問う標準的な問題です。

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