第二回 問8 民法総合

XはYに対して、Xが所有する乙のアパートを500万円で賃貸したい旨の申込みを電子メールで令和5年10月15日に送信した(以下この問において「本件申込み」という。)が、本件申込みがYに到達する前にXが重傷を負い、意識不明となった場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.Yが承諾の通知を発する前に、YがXの意識不明の事実を知ったとしても、本件申込みは効力を失わない。

2.Xが、本件申込みにおいて、自己が意識不明となった場合には申込みの効力を失う旨の意思表示をしていたときには、YがXの意識不明の事実を知らないとしても本件申込みは効力を失う。

3.本件申込みが効力を失わない場合、本件申込みに承諾をなすべき期間及び撤回をする権利についての記載がなかったときは、Xの法定代理人は、本件申込みをいつでも撤回することができる。

4.本件申込みが効力を失わない場合、Yが承諾の意思表示を発信した時点で乙のアパートの賃貸契約が成立する。

問8 解答

正解 1 (難易度B)

1.○ 正しい YがXの意識不明の事実を知ったとしても、申込み(オファー)の効力自体は失われません。この原則は、民法の明示的な規定ではなく、契約の成立要件としての原則に基づいています。契約の成立には、申込みと承諾が必要で、特段の事情がない限り、申込みの効力は持続する。

2.× 民法の規定によれば、申込みは、申込者の死亡・喪失等により失効するものとされています(民法第523条)。しかし、Xが「意識不明」になっただけであれば、この規定の適用は受けません。そのため、Xが特別に意思表示をした場合のみ、その通りの効果が生じると解釈される。

3.× 民法には、申込みをいつでも撤回できる旨の規定が存在します(民法第522条)。しかし、法定代理人がいつでも撤回できるかについての明確な規定は存在しない。この選択肢が不正解となるのは、その点に関する具体的な条文が不明であるためです。

4.× 一般的に、承諾の意思表示が相手方に到達した時点で契約が成立する(民法第525条)。しかし、この選択肢は「Yが承諾の意思表示を発信した時点」となっている。発信時点ではまだ契約は成立しない。到達時点での成立が前提となる。

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