令和5年度問6 国政調査権の限界に関する次の文章の趣旨に照らして、妥当でないものはどれか。

令和5年度本試験

問6 憲法

ところで司法権の独立とは、改めていうまでもなく、裁判官が何らの「指揮命令」に服さないこと、裁判活動について何ら職務上の監督を受けないことを意味するが、単に「指揮命令」を禁止するにとどまらず、その実質的な意義は、身分保障その他、裁判官の内心における法的確信の自由な形成をつねに担保することにある。司法権の独立が、・・・(中略)・・・、「あらゆる現実の諸条件を考えた上で、社会通念上、裁判官が独立に裁判を行うことに対して、事実上重大な影響をおよぼす可能性ある行動」を排斥するのは、かような趣旨にもとづくものといえよう。その結果、第一に、立法権・行政権による現に裁判所に係属中の訴訟手続への干渉は一切禁止されるのみならず、第二に、他の国家機関による判決の内容の批判はいかに適切であろうとも許容されないという原則が要請される。

(出典 芦部信喜「憲法と議会政」から)

1 議院が刑事事件について調査する際には、その経済的・社会的・政治的意義などを明らかにすることで立法や行政監督に資する目的などで行われるべきである。

2 裁判への干渉とは、命令によって裁判官の判断を拘束することを意味するから、議院による裁判の調査・批判は何らの法的効果を持たない限り司法権の独立を侵害しない。

3 議院の国政調査権によって、裁判の内容の当否につきその批判自体を目的として調査を行うことは、司法権の独立を侵害する。

4 刑事裁判で審理中の事件の事実について、議院が裁判所と異なる目的から、裁判と並行して調査することは、司法権の独立を侵害しない。

5 議院の国政調査権によって、裁判所に係属中の事件につき裁判官の法廷指揮など裁判手続自体を調査することは許されない。

問6 解答

正解 2 (難易度:C)

1.○ 正しい。議院が刑事事件について調査する際、立法や行政監督に資する目的などで行われることは、国政調査権の範囲内であり、司法権の独立を侵害しないとされています。

2.× 間違っている。芦部信喜「憲法と議会政」における趣旨に照らして、議院による裁判の調査や批判が司法権の独立を侵害しないとするこの選択肢は妥当でない。裁判に対する事実上重大な影響を及ぼす行為は、司法権の独立を損なう可能性があるためです。

3.○ 正しい。議院の国政調査権による裁判内容の当否に関する批判自体を目的とした調査は、司法権の独立を侵害するとされています。

4.○ 正しい。刑事裁判で審理中の事件について、議院が裁判所とは異なる目的から調査を行うことは、司法権の独立を侵害しないとされています。これは、調査が裁判官の判断に事実上重大な影響を及ぼさない限りにおいてです。

5.○ 正しい。議院の国政調査権によって裁判所に係属中の事件に関して、裁判手続自体を調査することは許されないとされています。これは、裁判手続への不当な干渉と見なされ、司法権の独立を侵害する行為にあたります。

不正解の選択肢2は、司法権の独立を侵害する可能性がある議院による裁判の調査・批判を許容している点で間違っています。芦部信喜「憲法と議会政」や憲法第76条の司法権の独立を保障する規定に基づき、このような行為は原則として認められません。

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