問4 憲法
1 憲法は何人に対しても平穏に請願する権利を保障しているので、請願を受けた機関はそれを誠実に処理せねばならず、請願の内容を審理および判定する法的義務が課される。
2 立法行為は、法律の適用段階でその違憲性を争い得る以上、国家賠償の対象とならないが、そのような訴訟上の手段がない立法不作為についてのみ、例外的に国家賠償が認められるとするのが判例である。
3 憲法が保障する裁判を受ける権利は、刑事事件においては裁判所の裁判によらなければ刑罰を科せられないことを意味しており、この点では自由権的な側面を有している。
4 憲法は、抑留または拘禁された後に「無罪の裁判」を受けたときは法律の定めるところにより国にその補償を求めることができると規定するが、少年事件における不処分決定もまた、「無罪の裁判」に当たるとするのが判例である。
5 憲法は、裁判は公開の法廷における対審および判決によってなされると定めているが、訴訟の非訟化の趨勢(すうせい)をふまえれば、純然たる訴訟事件であっても公開の法廷における対審および判決によらない柔軟な処理が許されるとするのが判例である。
問4 解答
正解 3 (難易度:C)
1.× 憲法は平穏に請願する権利を保障していますが、請願を受けた機関に請願の内容を審理および判定する法的義務を課すものではありません。この点が誤解されやすいが、請願権は受理および回答を求める権利にとどまります。
2.× 立法行為に対する国家賠償は原則として認められていませんが、立法不作為に対する賠償が認められるかどうかは論点が複雑であり、一概に「例外的に国家賠償が認められる」とするのは正確ではありません。立法不作為に関する賠償責任の設定は、具体的な事案に基づいて判断されます。
3.○ 正しい。憲法は刑事事件において被告人が裁判所の裁判によってのみ刑罰を科せられることを保障しており、これは自由権的な側面を有しています。これは裁判を受ける権利の重要な部分であり、正確な記述です。
4.× 「無罪の裁判」を受けた後に国に対して補償を求めることができるとの規定はありますが、少年事件における不処分決定を「無罪の裁判」と同一視することはできません。少年事件の不処分決定は、成人の刑事裁判とは異なる性質を持っています。
5.× 憲法は裁判の公開と対審の原則を規定していますが、これは訴訟の非訟化の趨勢を理由に柔軟な処理が許されると解釈されるものではありません。公開の法廷および対審による判決は、公正な裁判を保障するための重要な原則です。
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