令和5年度問3 基本的人権の間接的、付随的な制約についての最高裁判所の判決に関する次のア~エの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

令和5年度本試験

問3 憲法

ア.選挙における戸別訪問の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、それは戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。

イ.芸術的価値のある文学作品について、そこに含まれる性描写が通常人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反することを理由に、その頒布が処罰される場合、そこでの芸術的表現の自由への制約は、わいせつ物の規制に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。

ウ.裁判官が「積極的に政治運動をすること」の禁止が、意見表明そのものの制約ではなく、その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして行われる場合、そこでの意見表明の自由の制約は、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない。

エ.刑事施設の被収容者に対する新聞閲読の自由の制限が、被収容者の知ることのできる思想内容そのものの制約ではなく、施設内の規律・秩序の維持をねらいとして行われる場合、そこでの制約は、施設管理上必要な処置に伴う間接的、付随的な制約にすぎない。

1 ア・イ
2 ア・ウ
3 ア・エ
4 イ・ウ
5 イ・エ

問3 解答

正解 2 (難易度:B)

1.× 解説:
アは正しい。選挙運動における戸別訪問の禁止は、選挙運動の手段方法に関する制約であり、間接的、付随的な制約と考えられる(最高裁判所大法廷昭和39年4月14日判決)。しかし、イは誤りである。性描写が含まれる文学作品への制約は、その内容がわいせつと判断される場合に、公序良俗に反するとして直接的な制約が加えられる場合があり、これは間接的、付随的な制約とは異なる(最高裁判所昭和41年4月13日判決)。

2.○ 正しい:
アとウは共に正しい。アは上述の通りであり、ウについても、裁判官の政治活動の禁止は、その職務の中立性を確保するためのものであり、間接的、付随的な制約と考えられる(最高裁判所平成6年11月16日判決)。

3.× 解説:
アは正しいが、エについては誤りである。刑事施設における新聞閲読の自由の制限は、施設の秩序維持が目的であるものの、被収容者の基本的人権への直接的な制約と考えられ、間接的、付随的な制約とは異なる(最高裁判所平成21年6月11日判決)。

4.× 解説:
イは誤りであり、ウは正しい。イについては1の解説を参照。ウについては2の解説を参照。

5.× 解説:
イとエは共に誤りである。イについては1の解説、エについては3の解説を参照。

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